2022/08/07

 クリニックにでもかかって眠剤を貰いにいこうか考える。けれど、眠れないのか、眠りたくないのかよく分からないし、以前内服していたマイスリーは身体にあわなかったのもあって、あまり気が進まない。眠れないのも眠りたくないのも、その日を終わらせるのに納得がいかないからのかもしれない。

 先日、ついに新型コロナウイルスに感染した。大学4年生の春頃に徐々に感染者が急増して、世界的なパンデミックとなったわけだけれど、ついに自分も感染した。症状は咽頭痛やそれに伴う咳嗽くらいで微々たるものだった。熱も出なかった。しかしながら、何より普段から多動的なのもあり、外出できないことがとてもつらかった。孤独だった。

 最近になってまた感染者が急増、日々過去最多を塗り替えているけれど、最初のパンデミックから数年経ち、随分と警戒心は薄れてしまった。なんとなく世間的にも、「もういいだろう」という空気感を感じるし、最近ではマスクを外している人も増えてきた実感がある。ウイルスが蔓延してから中止していた地元の花火大会も、今年は数年ぶりに開催されたようだ。感覚としてはインフルエンザウイルスくらいの認識レベルになってきたような気もする。いいのか悪いのか私にはよく分からない。ただ、基礎疾患を持つ人たちや免疫の低い高齢者に感染して重症化、その末に亡くなり、家族は死に目にも立ち会えない。医療者は重労働の末、肉体的にも精神的にも疲労を積み重ねバーンアウト。実際、米国では最前線でコロナ医療に従事していた医師が自殺をしている。そういった結末があってはならない悲劇だという認識は変わらない。私にはそれしか分からない。

 一応医療現場で働いているのに、この世界規模のパンデミックは、外野から余所者として遠くから眺めているような感覚で後ろめたい。政治や、今現在も続いているロシアのウクライナ侵攻にも何となく同じような感覚でいる。自分のそういった感覚をよく思わないけれど、正直自分のことでいっぱいいっぱいで毎日が苦しい。今日を生きることにいっぱいいっぱい。この間の参議院選挙も、自分はどこの誰に投票したんだっけと思いながら、ニュース番組の速報をぼんやり見ていた。疲れているんだと思う。

 

 働いている病棟の患者から初めて感染者が出た。他の病棟では既にスタッフを含めたクラスターが発生し、職員が足りず、病棟がまわらない状態だ。その日、私ともう一人の職員で約40人分の患者の鼻咽頭から検体を採取し、COVID-19判定の検査に持ち込んだ。精神科の患者というのは何をするにも一筋縄にはいかない。時には複数名で四肢を抑えつけたりしながら、やっとの思いで仕事を終えた。全身を完全防備するためのPPE(個人用防護具)を装着しての活動には限界がある。ものの5分程度で汗だくになり、N95マスクを外しても、頬に残った跡はなかなか消えてくれない。本当にいつになったら終わるんだろう。こんな風に日常になってしまう前に、とっくのとうに終わると思っていた。別にコロナだけじゃないけれど、いつなったら終わるんだろう。