2023/10/28

 

 櫻井敦司が死んだ。そのことを知った夜、彼がボーカルとして活動していたバンド、BUCK-TICKの『ミウ』という曲を聴きながら眠りについた。濃いメイクを施した、鋭くて冷たい眼差しで妖艶に歌う姿が好きだった。亡くなったことを未だに信じられないまま、あれから毎晩『ミウ』を聴いている。嫌いだ、今夜もまた眠れやしない。

 残業と称し、患者複数名を引き連れて自助会へ行った。そこで私は医療スタッフとして、今現在の素直な思いを吐き出した。全く分かりません。どうすればいいか分からない。私達は一体、何をしたらいいのか。話している途中で、うっかり涙が出てしまうのではないかと思った。分からないのだ。分からない。どこにぶつけたらいいのかも分からないのだ。依存症の根は深く、掘っても掘っても、終わりがない。けれど、たったの2年でも分かったことがある。それは、依存症の行く末は死。ちゃんと、人が死ぬ病なのだ。

 現在の職場に入職して、もうすぐ2年が経つ。できることや任されることが増えたり、自分でも成長を実感することで自信になったことで、ようやく楽しさが分かってきた。その反面、外野から今にもバーンアウトするのではないかと心配されるほど、入り込み過ぎている。

 どうしたって人は救えない。'救う'なんて大袈裟だし、聞こえが良すぎるし、嘘っぽい。でも私にできることは、もう無理だと追い詰められて、なんか死んでしまおうかな〜とか考えちゃったりする人々の、最後の砦になることなんだと思う。家族は去っていきました。恋人も去っていきました。仕事では信頼を失いました。

 私の勤務する病棟の入院期間は基本的に3ヶ月。それでもたった3ヶ月である。退院後、一本のSOSの電話をかけてもいいかなと思ってもらえる3ヶ月であってほしい。でもできることなんて限られるから、今の自分にできることを精一杯やったら、もうあとは祈るしかない。